博士号論文『580年間に作られた脳』 -はじめに-

タイトル
     580年間に作られた脳
      【健脳を育てる三つの物差し】        はじめに           【No.11,29】

 はじめに
 1971年から、私は私塾において数学教育に携わりながら生徒と接し、しかも1964年から続けている玄米を中心とした健康食品を通して、「教育と健康」の両者を教育的側面から見てきました。一般的傾向として、姿勢が良く、肉体的症状もなく、落ち着きがあり、集中力・持久力がある生徒は教育効果が大きく、肉体的・精神的に疾患のある生徒は教育効果が小さい。
 最近の日本の生徒は、十数年前の生徒と比べて、集中力・持久力等の精神力においても、論理的思考力・応用力等の知力においても劣っている。また、肉体的健康面においても頭痛持ちであったり、歯・骨が弱く、肩こり・鼻づまり等を訴えるものが多くなっている。現に生徒の中には、ストレス・運動不足の上に、栄養過多の食生活が原因となって肥満的傾向をもった者が多くなり、さらに喘息・腎臓病等の病気にかかり、通院しながら塾に通うという者さえ現れて来ている。
 このような知力・精神力・体力の悪化を考慮せずして、単に外部環境としての教育教材・教育指導等の改善を行なったり、心理的側面からの教育方法論だけで生徒の教育効果は上がるのであろうか。今こそ、私達は教育の原点に返り、何のための教育であり、どのような教育方法が必要なのかを考えてみる必要がる。
 本来、教育は個人の知性・精神・体をより良い方向へ導くためにあるものであり、これによって個人の集合体である社会全体をもより良い方向へ築きあげるためにあるものではないか。ところが、個人の肉体や精神が病むならば、個人の知性や性格、さらには社会全体も病んでしまう。
 報道機関が伝えているように、家庭内暴力や校内暴力等で日本の学校の一部が荒れているが、これは、以上のような現実の延長線上に問題があるように思われる。また、現在の教育現場では、生徒が授業内容を理解できない割合を、「七・五・三」と表現している。この「七・五・三」とは小学校では七割、中学校では五割、高校では三割位の生徒しか学校の授業についていけないことを表現している。この一般的原因は、(一)家庭内の問題(二)授業内容の高度化(三)地域環境の悪化(四)教師の質の低下(五)価値観の多様化等によるものと言われている。しかし、その他の原因として最も基本的で、最も大切なことがあると指摘したい。即ち、生徒が粗暴化したり、学力・能力が低下したりする原因は、その子供自身の内部にある。即ち、胎児が母親の胎内で580年間過ごしているときに、受けた食生活の影響である。さらに別の表現を使えば、外部環境に左右され易くなっている生徒自身の内部環境が悪化している。ここで述べている内部環境とは、体液(血液リンパ液組織液)と細胞の両者を意味するものであるとすれば、生徒が粗暴化したり、能力が低下したりする原因は,子供自身の細胞と体液が悪化しているからである。
 つまり、脳の兄弟である歯・目・内臓等が弱っているように、悪玉コレステロ-ルや中性脂肪等の劣悪な体液の中に浸っている、脳自身が病んでいるのだと主張したい。脳の環境の改革なくして、健康的な体を備えた、子供たちの教育はない。
 ここに、本書の二大テ-マを次のようにまとめておく。

A)内部環境の重要視
 今日の日本の教育荒廃と能力低下の主原因は、外部環境に左右され易くなっている生徒自身の内部環境にある。それは、内部環境(体液・細胞)が悪化し、脳細胞が持つ力、内部生命力が不安定になっているからだ。特に、母親の胎内に滞在していた期間が、実は10ヶ月間ではなく、580年間であったからだ。
B)バランス感覚を備えた物の見方        
 物事を捕えるには、一面的な見方だけに陥らずに、時代の流れの中で、しかもバランスのとれた感覚で見たり、考えたりすることだ。特に、食生活を従来の欧米的発想の三大栄養素によるカロリ-計算だけで行なうのではなくはなく、副栄養素をも考慮した、シ-ソ-システムの活用にある。